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海を渡った日本の花 (36) ハナショウブ(3/3) Japanese Iris

Iris ensata Thunb. var. ensata Syn Iris kaempferi

1904In love's garden; a human nature book; John Cecil Clay "Oh, lady dear, hast thou no fear?

Why and what art thou dreaming here?

Sure thou art come o’er far-off seas,

A wonder to these garden trees! "

From “The Sleeper” By Edgar Allan Poe


"In love's garden; a human nature book"
John Cecil Clay, inv. et del (1904) 米国 多色石版


Thomas Hogg Jr. が米国に ハナショウブを最初に輸出したのは1892年.日本開国後,1862年にリンカーン大統領によって関税システムの日本導入のため派遣された T. Hogg Jr. は,職を離れた後8年間日本にとどまり,日本原産の植物の研究をした.彼が父の経営するニューヨークの育苗園に送った多くの植物の内に,数株のハナショウブが含まれていたとされる.その普及はそう速くはなかったが,1908年までには,多くの公園や植物園に見られるようになり,栽培や改良も進み,今に残るいくつかの品種が育種された(“The Japanese Iris” Currier McEwen UPNE, 1990). 

一方,苗や種の日本からの輸出も盛んになり,西欧人の嗜好に会った花姿を持つ品種への改良も進んだ.北海道開拓使に雇用され10年の長きに亘り北海道の近代農業発展に貢献したドイツ生まれのルイス・ベーマー(Louis Boehmer, 1843 - 1896)が指導した上島正(1838 - 1919)は花菖蒲の人工交配により多くの新品種の育種に成功した.
1882年(明治15年)開拓使の廃止にともないベーマーは,横浜に輸出入園芸業のベーマー商会を設立し,日本人の鈴木卯兵衛(1838 - 1910)を仕入主任(番頭)に雇い,日本の園芸植物の輸出に力を注いだ.上島の庭園(東皐園)で作られた花菖蒲はその後アメリカに輸出される事になったが,これにはベーマーが力を貸したのだろうと考えられている.
Yokohama Nursery Catalogue Iris
その後,鈴木卯兵衛は独立し,1890(明治23年)有限責任横浜植木商会(現 ㈱横浜植木)を設立し,ユリ,ハナショウブ,ボタン等の園芸植物の他,カキなどの果樹の対米輸出の大手に成長した.1897年(明治30)の春には輸出用花菖蒲の栽培及び品質改良の為,磯子に花菖蒲園を開設し,1903年(明治36) には海外販路拡張に伴い一層増産の為,蒲田に花菖蒲の圃場を開設し,ニューヨークの支社を通じて輸出に注力した(右,米国向けカタログ).他にもいくつかもの商社も輸出を手がけていた(左図).
Price list また,政府も輸出産物としての花卉植物に注目し,神奈川県農事試験場に補助金を交付して,宮澤文吾(1883 - 1968)を中心にハナショウブやシャクヤクの優良品種育成を委託した.神奈川農試在任中,宮澤が育成したシャクヤクは 700 品種,今日「大船系」と呼ばれる ハナショウブは 300 品種にのぼり,海外にも輸出され好評を博した.

この様に米国で歓迎されていたハナショウブ Japanese Iris だが,太平洋戦争の勃発に伴い,敵国由来でその名を持つ植物として迫害を受け,各地の植物園から姿を消し,また本人の反日感情あるいは周囲からの目を気にして、愛好家も減った.その中,ウイリアム・A・ペーン (W. Arlie Payne 1881-1971) は栽培、品種改良を続け,戦争が終わって反日感情が薄れ花菖蒲が見直される様になってからは,ペーン氏の所を起点として,再び全米に花菖蒲がひろまっていった.現在のアメリカ系の花菖蒲の大部分はペーン氏から始まったので,ペーン氏はアメリカの花菖蒲を守った大恩人であるといわれている.

左はペーン氏が育種した "Great Mogule", 中央・右は米国の花菖蒲園の光景(米国ハナショウブ協会のHPより)
Combined for Iris Kaempfer 

現在,米国に全米アイリス協会の一支部として ”The Society for Japanese Irises” があり,活発な活動を続けていて,毎年優秀なハナショウブの品種にペーン氏を記念した賞を与えている(http://www.socji.org/paynebio.htm).受賞品種を見ると平咲きや碗咲きで濃色系の花をつける品種が多いのは,いかにも派手な花を好む米国らしい.この協会支部のHPを見ると,メリーランド州に3箇所,ミシガン州に2箇所など,全米で北部中心に14の州に23の “Display Garden 花菖蒲園” があるとのこと. 

ユリと並んで西欧で愛されている日本原産の観賞用草本だが,ユリよりも新品種の育成が容易なために,これからも新しい西欧の好みに合った新種が数多く開発されるであろう.

エドガー・アラン・ポーの “The Sleeper” の全文は追記で見ることが出来るが,なぜ,John Cecil Clay が擬人化したハナショウブにこの詩をつけたのかは良く分からない.
The Sleeper
By Edgar Allan Poe 1809–1849

At midnight, in the month of June,
I stand beneath the mystic moon.
An opiate vapor, dewy, dim,
Exhales from out her golden rim,
And softly dripping, drop by drop,
Upon the quiet mountain top,
Steals drowsily and musically
Into the universal valley.
The rosemary nods upon the grave;
The lily lolls upon the wave;
Wrapping the fog about its breast,
The ruin moulders into rest;
Looking like Lethe, see! the lake
A conscious slumber seems to take,
And would not, for the world, awake.
All Beauty sleeps!—and lo! where lies
Irene, with her Destinies!

Oh, lady bright! can it be right—
This window open to the night?
The wanton airs, from the tree-top,
Laughingly through the lattice drop—
The bodiless airs, a wizard rout,
Flit through thy chamber in and out,
And wave the curtain canopy
So fitfully—so fearfully—
Above the closed and fringéd lid
’Neath which thy slumb’ring soul lies hid,
That, o’er the floor and down the wall,
Like ghosts the shadows rise and fall!
Oh, lady dear, hast thou no fear?
Why and what art thou dreaming here?
Sure thou art come o’er far-off seas,
A wonder to these garden trees!
Strange is thy pallor! strange thy dress!
Strange, above all, thy length of tress,
And this all solemn silentness!

The lady sleeps! Oh, may her sleep,
Which is enduring, so be deep!
Heaven have her in its sacred keep!
This chamber changed for one more holy,
This bed for one more melancholy,
I pray to God that she may lie
Forever with unopened eye,
While the pale sheeted ghosts go by!

My love, she sleeps! Oh, may her sleep,
As it is lasting, so be deep!
Soft may the worms about her creep!
Far in the forest, dim and old,
For her may some tall vault unfold—
Some vault that oft hath flung its black
And wingéd pannels fluttering back,
Triumphant, o’er the crested palls
Of her grand family funerals—

Some sepulchre, remote, alone,
Against whose portals she hath thrown,
In childhood, many an idle stone—
Some tomb from out whose sounding door
She ne’er shall force an echo more,
Thrilling to think, poor child of sin!
It was the dead who groaned within.

Source: The Complete Poems and Stories of Edgar Allan Poe (1946)

エドガー・ポーの詩「眠れるひと」THE SLEEPER(壺齋散人訳)

  六月のある真夜中
  神秘の月を見上げれば
  その金色の縁からは
  眠たげなかすみが滲み出し
  露がしたたり落ちるように
  静かな山の頂をかすめ
  ゆるやかなリズムにのって
  深い谷間へと落ちていく
  墓にはローズマリーがうなだれ
  水辺ではユリが首を垂れ
  深い霧に包まれながら
  廃墟が静かに横たわる
  そして湖は忘却の川のように
  ひと時の眠りにまどろみ
  動く気配も見せない中
  あらゆるものが眠りにつく
  そして開け放った窓の内側では
  アイリーンが永久の眠りについている

  おお 美しいアイリーンよ
  窓を開け放していいのかい?
  木をゆらせていた浮気な風が
  笑いながらお前の窓をすり抜けて
  うごめく幽霊のように
  お前の部屋を出入りしては
  お前の寝台のカーテンを
  ざわざわと揺らせている
  閉じられたお前の瞳の裏側には
  お前の魂が隠れているのかい
  その魂がそとを徘徊して動き回り
  亡霊のような影を描いている
  アイリーン 怖くはないのかい?
  なぜこんなところでまどろんでいるのかい?
  お前は海の彼方からやってきて
  この庭園を歩いていたのかい?
  なんという蒼白さ なんという装い
  お前の髪のなんと長いこと
  すべてが深い沈黙に包まれている

  アイリーンは眠る そのままに眠れ
  いつまでも そして深い眠りを
  神よ 彼女を聖なるままに保ちたまえ
  この部屋を清らかなものに与えたまえ
  このベッドを心痛めるものに与えたまえ
  神よ 彼女を眠らせたまえ
  永遠に目を開くことなく
  たとえ幽霊がじゃまをしようとも

  愛するアイリーンよ 眠れよ眠れ
  続く限り 深い眠りを
  蛆虫どもも邪魔をするな!
  遠くの小暗い森の中の
  地下に掘られた墓地をあけよう
  羽のついた黒い扉を
  ばたんと開いて中に入れば
  飾り柱の向こう側に
  彼女の家族の墓がある
  小さい頃にたったひとりで
  彼女はよく遊んだものだ
  石を投げつけてみたりして
  扉がいやな音を立てたものだが
  もうその音を引き起こすものはいない
  ああアイリーン 罪深かった子よ
  これからはお前がうめき声をたてるのだ
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